灼熱東亜~在台日本人の観る日本・台湾・中国~

台湾に住む日本人大学院生が東アジア(日本・台湾・中国)情勢について書きます。

中国軍機13機が沖縄本島と宮古島との間の上空を通過

2日、防衛省統合幕僚監部は同日午前から午後にかけて、中国軍機計13機が東シナ海から沖縄本島と宮古島との間の上空を通過し、その後、反転して引き返したことを発表した。

 

統合幕僚監部の報道発表資料「中国軍用機の飛行及び中国海軍艦艇の動向」によると、確認されたのはY-8早期警戒機1機、爆撃機と推定される軍用機6機、戦闘機と推定される軍用機6機で、航空自衛隊が緊急発進して対応した。

 

また、統合幕僚監部は同日、周辺海域において、中国海軍の艦艇計3隻も確認されたと発表した。同報道発表資料によると、海上自衛隊第12護衛隊「うみぎり」(呉)は、中国海軍ルーヤンIII級ミサイル駆逐艦1隻、ルーヤンII級ミサイル駆逐艦1隻を宮古島の南東120km~200kmの海域で確認したほか、海上自衛隊第5航空群「P-3C」(那覇)は久米島の南南西90km の海域において、中国海軍 ジャンカイII級フリゲート1隻を確認した。これらの艦艇は東シナ海に向けて北西進したことを確認している。

 

一連の中国の動向について、中国の新華社は、これは中国海軍の年度訓練であり、特定の国家や目標はなく、国際法や国際規則に基づいているとしている。

 

また台湾の国防部は同事案について、該当の演習区域が台湾の防空識別圏と距離があるとしつつも、「國軍經常戰備時期突發狀況處置規定」に基づき、偵察監視を実施し、海空の動態を把握していると発表した。

 

今回、領空侵犯及び領海侵犯はなかったが、2日の産経新聞によると、記録のある平成15年以降の緊急発進対応として13機は過去最多であった。

 

今年1月20日に防衛省統合幕僚監部が発表した「平成28年度3四半期までの緊急発進実施状況について」によると、平成28年度3四半期までの緊急発進回数は883回で、前年度の同時期に比べて316回の大幅な増加があったとしている。

そのうち、644回は中国機に対するもので、全体の約73%を占めた。なお、前年度同時期は373回であったことから、271回の大幅な増加がみられた。

 

2日、統合幕僚長の河野克俊は記者会見において、今年度の緊急発進回数はすでに1000回を超えていると指摘した。これは1984年度の944回を上回り過去最多である。

その背景について河野は「中国の活動が非常に活発化し、活動範囲も広がっていることが主な原因だ」と言及した。

 

中国機に対する緊急発進回数は年々増加傾向にあり、日本周辺での活動が活発化していることは明らかで、さらに活動も常態化している。

今回のように活動のレベルを徐々に引き上げながら、積極的な海洋進出を図ることは避けられず、日本も量・質ともに優位性を確保するための対応が迫られる。

G20外相会合(ドイツ・ボン)における日中外相会談

2月17日、G20外相会合のためドイツのボンを訪れていた外務大臣の岸田と中国外交部長の王毅は日中外相会談を行なった。

 

2016年の8月以来となる今回の日中外相会談は約40分強、行なわれ、日中国交正常化45周年の節目の年に、日中関係の重要性を再認識し、「戦略的互恵関係」の下で両国が共に関係改善に向けて努力することで一致した。

 

両外相はまず2017年が日中国交正常化45周年、2018年が日中平和友好条約締結40周年であることから、先人たちの初心を忘れず、両国関係の発展の良い面、悪い面の教訓と経験を総括し、今後の日中関係を「正しい方向に発展させる」ことを確認した。

 

岸田からは2016年のG20及びAPECにおける日中首脳会談で、両首脳が日中間の懸案を適切に処理し、関係改善に向けて両国が共に努力していくことを確認した点に言及し、「戦略的互恵関係」の下で引き続き日中関係の改善を進めていきたい旨、期待を表明した。

 

また日中間の懸案について、岸田は東シナ海問題を指摘し、中国側の対応を求めた。

加えて、12日に北朝鮮が新型弾道ミサイルを発射したことについて、安保理常任理事国である中国が建設的対応をするよう要求し、安保理決議の遵守の重要性について意見の一致を見た。

 

一方で王は、日本側が最近、「重大で敏感な問題」で「消極的な対応を取っている」と懸念を表明した上で、日本側が「約束を遵守し、言行を一致させ、両国の政治的基礎を阻害することを防止することで、日中関係の真の関係改善が実現できる」と強調した。

 

また王は台湾における中国の立場を表明している。これについて、日本の外務省の発表では、岸田から日本政府の基本的立場として、1972年の日中共同声明にある通り、一貫している旨等、基本的考えが述べられたとしている。

 

一方で中国外交部の発表では、より具体的に、岸田が「二つの中国」と「一つの中国、一つの台湾」への不支持を重ねて表明し、また「台湾独立」も支持しないとして、台湾問題における日本政府の不変の立場表明があったことを強調している。

 

同日には、初の米中外相会談も行なわれており、米国の「一つの中国」政策の堅持も再確認された。

 

中国にとって核心的利益である台湾について、今回、王毅は二国間会談を通して日米両国の「一つの中国」原則の堅持を確認した。

これによって中国の不安は払拭され、安堵していることだろう。

 

トランプ新政権の誕生後、その対中政策の不透明さから、中国は静観の構えを見せてきた。

しかし今月に入り、トランプと習近平の電話会談、そして今回の米中外相会談と対話の機運が加速している。

今後は米中首脳の直接会談がいつ実現するかが注目される。

 

日本は米中関係の行方を見据えながら、中国との対話を継続し、信頼醸成を図ることで両国の偶発的衝突を避けるよう努力が求められる。

「海空連絡メカニズム」の早期運用開始など、日中国交正常化45周年の節目の年に何が実現できるか、また何が両国関係の発展を妨げるか。

2017年は今後の日中関係の発展にとって試金石となる年になるだろう。

日米首脳会談と中国

9日から13日にかけて訪米した安倍は、トランプの大統領就任後では初めてとなる日米首脳会談を行なった。今回の訪米には外務大臣の岸田、副総理兼財務大臣の麻生も同行しており、それぞれ国務長官のレックス・ティラソン、副大統領のマイク・ペンスと会談している。

 

今回の訪米に先立つ3日から4日には国防長官のジェームズ・マティスが訪日しており、安倍を表敬訪問したほか、岸田や防衛大臣の稲田と会談を行なっている。

マティスは訪日中、最初の訪問先に東アジア地域を選んだ理由として、「米国にとっての日本の重要性を示すため」と繰り返し、地域の平和と繁栄と自由のため同盟のさらなる強化が必要と決意を表明した。

加えて、尖閣諸島が日本の施政下にあり、日米安全保障条約第5条が適用されることを言明した。

また大統領選挙中からトランプが言及していた在日米軍駐留経費負担の問題についても、日本は他の国の「モデル」や「お手本」になるとし、肯定的に日本を評価した。

このマティス訪日は国内外に「揺らぐことのない日米同盟」をアピールする機会となり、トランプ政権が域内の安全保障にコミットするかどうかの懸念を払拭することに成功したと言える。

 

今回の安倍訪米は、安倍とトランプの個人的信頼関係を構築し、日米同盟の重要性を再確認するものとなった。

 

日米首脳会談後に発表された共同声明には、初めて尖閣諸島における安保条約第5条の適用が明記されたほか、「核及び通常戦力の双方によるあらゆる種類の米国の軍事力を使った日本の防衛に対する米国のコミットメントは揺るぎない」とし、文字通り「揺らぐことのない日米同盟」を強調した。

 

経済関係についても、TPPから米国が離脱表明したことを留意しつつ、二国間の枠組みに関して議論を行なうこと、また日本は「既存のイニシアティブ」を基礎に地域レベルの進展を引き続き推進することなど「最善の方法」を探求することを誓約している。

そして、麻生とペンスの下に、経済政策、インフラ投資やエネルギー分野での協力、貿易・投資ルールの3点を柱とした経済対話を立ち上げることも決定した。

 

一連のマティス訪日、今回の安倍訪米を通して、「揺らぐことのない日米同盟」を確認し、日米両国の「密月」を世界にアピールすることに成功したが、中国はこれをどのように受け止めているだろうか。

 

マティスが訪日時に尖閣諸島の安保条約第5条の適用を発言した際には、外交部報道官の陸慷が3日の記者会見において、「釣魚島及びその付属島嶼は古来より中国固有の領土であり、この歴史的事実は改竄できない」として従前通りの中国政府の立場を表明している。

また日米安全保障条約について、同条約は「冷戦期の産物」とし、「釣魚島の主権問題における誤った言説」と「問題を複雑化させ地域の不安定要因を生み出す」ことを止めるよう、米国に要求している。

 

また今回、日米共同声明に尖閣諸島の安保条約第5条の適用が明記されたことについて、外交部報道官の耿爽は13日、「日米の関連した言説を厳しく注視しており、断固として反対する」と不満を表明している。

その上で、中国政府の尖閣諸島の主権に対する立場を表明し、「日本がいわゆる『日米安保条約』を利用して米国を巻き込み、その違法な領有権の主張を裏書きすることに断固反対する」と日米安全保障条約に対する批判も展開している。

 

今回の共同声明では名指しは避けながらも関係国が「拠点の軍事化を含め、南シナ海における緊張を高め得る行動を避け、国際法に従って行動することを求める」として、中国の南シナ海における軍事的行動に懸念を示している。

 

これについて、耿は同日の会見で、「中国は南シナ海の諸島及び近海に対して争うことのない主権を有している」とし、各島嶼上における建設は「主権の範囲内で、軍事化とは無関係」と反論している。

さらに名指しは避けながらも米国の同海域における艦船投入に言及した上で、「日米が客観的、理性的に南シナ海問題に向き合い、南シナ海の平和と安定に利することをする」ように要求している。

 

このように中国は「尖閣問題」、東シナ海や南シナ海の「海洋問題」については日米に対し反対や懸念を表明している。

しかしそれらはいずれも従前通りの原則的な立場の表明にとどまっており、目新しいものはない。

 

その背景には中国がまだ米国の対中政策を慎重に見極めていることが考えられる。加えて今回の日米首脳会談の開催前には米中首脳の電話会談が行なわれ、米国の「一つの中国」原則の堅持が確認できたばかりである。

 

したがって、このような中で行なわれた日米首脳会談に対する中国の受け止めは抑制的であったと言えるだろう。

トランプ-習近平電話会談

10日、米国大統領のトランプと中国国家主席の習近平が初めて首脳間電話会談を行なった。

 

これに先立つ8日、トランプは習に対して書簡を送っている。書簡では習が大統領就任を祝福した書簡に対する謝意と中国の元宵節に対するお祝いが述べられた。

加えて、「米中双方が利益を享受する建設的関係の構築に向けて習主席と共に取り組めることを楽しみにしている」とも言及した。

 

中国側はトランプの書簡について、外交部報道官の陸慷が9日の記者会見において、「高く称賛している」と肯定的に評価した。

また陸は米中が「世界の平和と安定、グローバルな発展と繁栄の促進など、特殊で重要な責任を負っており、広範な共同利益を有している」とし、「協力は米中両国にとって唯一の正しい選択肢」であり、「不衝突不対抗、相互尊重、ウィンウィンの原則」を堅持して「健全で安定した基礎の上に米中関係を推進し、更なる発展の取得」を望んでいると今後の米中関係に期待を表明した。

 

また、同会見において、記者からトランプとの電話会談の可能性について問われた陸は「我々は従前から米中高官の密接な交流を維持しており、トランプ大統領の就任以来、米中双方は一貫して密接なコミュニケーションを図っている」と強調し、電話会談の可能性を示唆していた。

 

中国外交部の発表によると、今回の電話会談冒頭で習は、トランプの大統領就任の祝福、8日の書簡への謝意、加えてトランプの提唱する建設的関係の構築を高く称賛していると伝えた。

 

米中関係について習は、「我々は米国と経済貿易、投資、科学技術、エネルギー、人文、インフラなどの領域においてウィンウィンの協力関係を強化したい」とし、「国際的また地域的な課題においても協調関係を強化し、共に世界の平和と安定を維持したい」と述べた。

 

これに対しトランプは、米中高官のコミュニケーション維持の重要性を指摘し、「米中は協力のパートナーとなり、共同努力を通じて、両国関係を新たな歴史の高みへ推進できると信じている」と強調した。

 

さらにトランプはこれまで疑義を唱えていた「一つの中国」政策について、「米国政府が『一つの中国』政策を堅持することの高度な重要性を十分に理解している」とし、「米国政府は『一つの中国』政策を堅持する」と発言した。

習はこれを称賛し、「『一つの中国』原則は米中関係の政治的基礎」と強調した。

 

これについて台湾の総統府報道官の黄重諺は「米台双方はこれについて密接にコミュニケーションをとっており、これまで通りのよい『確実』なやり方を維持していく」と強調した。

また「米国は台湾にとって国際上、最重要の盟友である」とし、「台湾の核心利益は国家の自由民主の永続、台湾の国際社会への積極参加と地域の平和と安定の確保と同時に、良好な米台関係と両岸関係の維持である」と述べた。

加えて、国務長官のティラーソンをはじめ米国政府が繰り返し台湾への支持と台湾関係法の承諾を表明していることについても謝意を示した。

 

今回の電話会談を通じ、米国が引き続き「一つの中国」政策を堅持することを確認できたことは中国を安堵させた。

同時に電話会談では米中間の密接なコミュニケーションの維持と早期の首脳会談の実現にも同意しており、米中はあらゆる領域での対話を模索していくだろう。

 

しかし、米中間には通商や為替、南シナ海および東シナ海における海洋問題など、関係の促進に障害となる課題が山積している。

 

米中戦略経済対話など、米中間の対話メカニズムを活用し、如何に信頼醸成を図るのか注目していく必要がある。

習近平国家主席のスイス公式訪問とダボス会議出席

1月15日から18日にかけて中国国家主席の習近平はスイスを公式訪問した。16日にスイス大統領のロイトハルトと会談したほか、17日には世界経済フォーラム(ダボス会議)年次総会に出席し開幕式で基調講演を行なった。また、18日には国際オリンピック委員会会長のトーマス・バッハ、WHO事務局長の陳馮富珍、国連総会議長のピーター・トムソンおよび国連事務総長のアントニオ・グテーレスとそれぞれ会談した。

 

今回の訪問には夫人の彭麗媛をはじめ、王滬寧(党中央政治局委員・党中央政策研究室主任)、栗戦書(党中央政治局委員・党中央書記処書記・党中央弁公庁主任)、楊潔篪(国務委員)らが同行した。またジャック・マー(アリババ創業者)、王健林(大連万達グループ董事長)、孫亜芳(華為技術董事長)ら企業関係者も同行している。

 

今回のダボス会議の出席について、2015年(年次総会)と2016年(夏季ダボス会議)には国務院総理の李克強が出席していたことから、習が初めて参加したことは国際社会から注目を集めた。

 

習は約50名の国家元首を含む約1700名が出席した開幕式において、「共に時代の責任を担い、共に世界の発展を促進する(原題:共担时代责任 共促全球发展)」と題した基調講演を行なった。

 

講演では経済のグローバル化に対する見方を述べた上で、「揺るぎなく経済のグローバル化は推進しなければならない」と反グローバリズムに反対の認識を強調し、保護主義に否定的な見方を示したほか、「揺るぎない人類運命共同体意識の樹立」の理念を提示して国際社会の協調が重要であると語った。

また習は「中国の発展は世界のチャンス」であるとし、中国は「グローバル経済の受益者であると同時に貢献者でもある」と強調した。その上で「一帯一路」構想に言及し、それが雇用の創出や経済成長につながり、中国だけでなく世界に恩恵をもたらすと意義を述べた。

 

ダボス会議創設者で主催者のクラウス・シュワブは、習が世界経済フォーラム年次総会に出席し基調講演を行なったことは「特別重要な意義を有している」と肯定的に評価し、「中国の夢と世界の夢は相通じる」と述べ中国の国際経済における役割に期待を示した。

 

また習とシュワブとの個別会談では、中国とダボス会議の協力強化とグローバルな課題への共同努力を確認し、会談後には「中国国家発展および改革委員会と世界経済フォーラムの戦略的協力の全面深化への了解に関する覚書(中国国家发展和改革委员会与世界经济论坛关于全面深化战略合作的谅解备忘录)」の署名に立ち会った。

 

ダボス会議においては、同じく会議に出席していたアメリカ副大統領のバイデンとも会談を行なった。会談で習はまもなく退任するオバマに対し祝福の意を伝達するよう依頼し、オバマ政権下で「新型大国関係」構築の共通認識に至って以降、米中関係が正しい方向に発展したと評価した。また「両国国民と世界の人々の根本的利益にとって、米中両国の共同努力と長期に安定した協力関係が必要」と指摘し、トランプ政権以降の米中関係にも触れた。

 

なお、18日にジュネーブの国連欧州本部で行なった「共に人類運命共同体を構築する(原題:共同构建人类命运共同体)」でも「積極的にアメリカとの新型大国関係を発展させるよう努力する」と述べ関係強化の意思を表明した。また同演説では「大国は互いの核心的利益と重大な関心事項について尊重しなければならない」とも発言し、「一つの中国」原則に疑義を唱えているトランプを牽制したと考えられる。

 

習は今回のスイス訪問を中国の影響力を国際社会に十分にアピールする機会と考えただろう。一方で20日に誕生するトランプ政権に対する懸念は依然大きく、今回のスイスでの発言は不安と牽制も含まれたものだったと言えるだろう。

蔡英文総統の中米4カ国歴訪

1月7日から1月15日まで、台湾の総統・蔡英文は「英捷專案(“英”は蔡英文の“英”、“捷”は敏捷の“捷”、專案はプロジェクトの意)」と名付け、国交のある中米4カ国を歴訪した。蔡は総統就任後の6月24日から7月2日にかけてパナマとパラグアイを訪問(英翔專案)しており、今回は二度目の外遊である。

 

現在、台湾と外交関係のある国は21カ国(2016年12月21日に西アフリカのサントメプリンシペとの断交を発表)であり、今回、訪問したのはそのうちのホンジュラス、ニカラグア、グアテマラ、エルサルバドルであった。また訪問にあたり、7日と14日にはアメリカのヒューストンとサンフランシスコを経由している。

 

今回の外遊に同行したのは、政府からは国家安全会議秘書長の吳釗燮、外交部部長の李大維をはじめ、吳新興(中華民国僑務委員会主任)、姚人多(総統府副秘書長)、曾厚仁(国家安全会議副秘書長)、林總賢(宜蘭県県長)、侯清山(外交部次長)、翁章梁(行政院農業委員会副主任委員)、王美花(経済部次長)、黃重諺(総統府報道官)、劉志斌(総統府侍衛室中将侍衛長)、張文蘭(総統府公共事務室主任)であった。

財界からは林清波(ロイヤルホテルグループ総裁)、蔡宗融(開陽グループ董事長)、林見松(世界台湾商会連合会総会長)、陳郁然(台湾国際農産開発公司董事長)、黃育徵(台糖公司董事長)、詹正田(財団法人中華民国紡織業拓展会董事長)であった。

その他、立法委員のうち民進党から陳明文、姚文智、莊瑞雄、余宛如、時代力量から洪慈庸、親民党から周陳秀霞が同行したが国民党からの同行者はいなかった。

 

外遊目的について、蔡は出発前に、「堅実外交・互恵互助」の原則の下、(1)国交樹立国との関係を強化し、台湾が国際舞台へ羽ばたくための足場を築くこと(2)国交樹立国との協力プロジェクトを深化させ、海外で働くすべての台湾の人々を勇気づけることと語った。実際、外遊帰国後の15日に発表した談話において、外遊中に4名の国家元首と会談を行ない、グローバル社会の趨勢や将来の二国間協力の内容を話し合ったこと、またアメリカを経由した際に「重要人物」と会談したことなどを取り上げ、(1)の目的の成果を強調した。また(2)についても、訪問国で大使館職員や経済人、華僑を激励したことに言及した。

 

今回の外遊の中でも特に経由地であるアメリカのヒューストンとサンフランシスコでは多くの「重要人物」と接触している。明らかになっている主な行動は下記の通りである。

 

 

1月7日(ヒューストン)

・米国在台協会(AIT)会長のJames Moriartyと会談

・ヒューストン市長のSylvester Turnerと会談

・MD Anderson Cancer Center、ヒューストン美術館を訪問

・在米華僑との夕食会出席

James Moriartyのほか、下院議員Blake Farenthold(共和党)、Al Green(民主党)らが出席。

 

1月8日(ヒューストン)

・上院軍事委員長のジョン・マケインと電話会談

米国防部官僚の訪台制限を緩和する「国防権限法案」が議会を通過したことに対し蔡から感謝が述べられた。

・上院議員のテッド・クルーズと会談

クルーズより事前に中国側から接触を避けるよう圧力があったと証言。蔡よりTPPが困難となる中、米台間の自由貿易協定締結も「新しい方向の一つ」であると述べると、クルーズから支持があった。

・テキサス州知事のグレッグ・アボットと会談

 

1月14日(サンフランシスコ)

・Twitter本社見学

・在米華僑との昼食会

下院外交委員長のエド・ロイスの妻のほか、サンノゼ市長サム・リッカードらが出席。

 

 

なお、今回アメリカにおいてトランプ新政権関係者との接触については明らかになっていないものの、15日、毎日新聞は、台湾外交部関係者によると新政権で要職に就任する可能性のある元国務次官補代理のランドール・シュライバーと会談したと報じている。

 

4カ国歴訪については、9日にホンジュラス、10日にニカラグア、11日にグアテマラ、13日にエルサルバドルの順に訪問した。

なかでもニカラグア訪問では当初、明らかになっていなかった首脳会談が実現し、ダニエル・オルデガの大統領就任式典では蔡が来賓の序列1位であったほか、オルデガが蔡を「台湾総統(Republica de Taiwan)」と紹介するなど注目を集めた。

 

今回の外遊期間中、中国はいくつかの行動をとっている。1月11日には中国空母「遼寧」が台湾海峡を通過した。

また同日ナイジェリアを訪問していた外相の王毅はナイジェリア外相のオンエアマとの共同記者会見において、両外相が「一つの中国」原則を堅持することを唱った共同声明に署名したと発表した。

台湾とナイジェリアには外交関係はないが、1990年11月21日に覚書を交わし、1991年4月に当時の首都ラゴスに窓口機関として「中華民国商務代表団」を設置した(その後2001年8月、現在の首都アブジャに移転)。

これについて王は「明らかに『一つの中国』原則に違反している」と述べ、窓口機関の名称変更と、首都からの移転、人員削減、政府高官の往来禁止を要求した。

なお台湾外交部は1月12日、ナイジェリアに対して抗議と非難を表明し、ナイジェリアに人員を派遣すると発表した。

 

これらの中国の行動と蔡英文の外遊の関連性については引き続き分析の必要はあるが、蔡英文政権以降、中国政府が「一つの中国」原則の堅持を積極的に国際社会に働きかけていることは明らかである。

 

その一方で1月20日に大統領に就任するトランプは14日、ウォールストリートジャーナルのインタビューに応じ、米中関係について「すべての事項が交渉の対象となり、それには『一つの中国』原則も含まれる」と発言し、「一つの中国」原則を堅持するかどうかを曖昧にした。

 

中国の「核心的利益」である台湾について従来、米中間では「一つの中国」原則がコンセンサスとなっていたが、それが揺らぎ始めている。また中台間においても蔡は「92年コンセンサス」を認めていない。このような状況下で蔡英文の外遊に対して中国が圧力をかけた可能性は否定できず、同時にトランプ新政権への牽制の意味が含まれているとも考えられる。

 

「一つの中国」原則をめぐって、引き続き中国は台湾と外交関係のある国々に対して働きかけを強め、関係の分断を図るだろう。加えて台湾およびアメリカに対しては各種レベルの行動をとり圧力を強めることが予想される。

中国空母「遼寧」が台湾海峡を通過

台湾の国防部によると1月11日の午前7時(日本時間8時)、中国軍の空母「遼寧」艦隊が台湾南西の防空識別区に進入し、台湾海峡の中間線沿いを北に向かって航行した。

また1月10日夜にも国防部は「遼寧」艦隊が南シナ海での訓練を終え、母港(山東省青島)に向かって北上していることに対し「高度な警戒」をしており、総統および国防部は事態を完全に把握している旨、発表している。

なお国防部は11日の正午12時には広東省汕頭外海を通過し、中国の沿海を北上していると発表した。

 

11日の中央社(台湾)の報道によると、中米歴訪中の蔡英文は同日午前10時35分と53分にそれぞれ国家安全会議副秘書長の陳俊麟と国防部長の馮世寛と電話し、中国艦隊の最新動向のほか、国防部の関連する最新の対応、偵察状況などの報告を受けた。

また行政院大陸委員会主任の張小月は同日午前の記者会見で「遼寧」艦隊の動向について、いかなる脅しも両岸関係にプラスの働きはなく、両岸はお互いに歩み寄るべきと懸念を表明した。

 

これに対し、中国の国務院台灣事務弁公室報道官の馬暁光は11日の定例記者会見において、「私は現時点では実証しようがない」と詳細な言及を避け、国防部もしくは海軍に問い合わせるよう求めた。また馬は昨年の12月24日から「遼寧」艦隊が西太平洋海域で行なった遠海訓練は年度計画に基づいて実施されたものであると重ねて強調した。

 

「遼寧」は昨年12月23日に渤海湾で演習を実施した後、25日には宮古海峡およびバシー海峡を通過、26日に南シナ海に進入し、28日には海南島の三亜軍港に到達した。今回、台湾海峡を通過したことにより、12月末からの一連の動きは台湾を一周した形となった。

 

中国は一貫して「遼寧」艦隊の航行は「年度計画に基づいて実施されたもの」と繰り返し強調しているが、その戦略的な意図については分析が必要である。

今回の台湾海峡の通過は蔡英文の中米歴訪中に行なわれたが、その関連性については明らかではない。20日には「一つの中国」原則の堅持に疑義を唱えたトランプが大統領に就任する。米中関係、両岸関係の行方は不確実であるが、中国軍の海洋における行動は引き続き注視する必要がある。