読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

灼熱東亜~在台日本人の観る日本・台湾・中国~

台湾に住む日本人大学院生が東アジア(日本・台湾・中国)情勢について書きます。

対台湾窓口機関「交流協会」が「日本台湾交流協会」に名称変更へ

日台関係

12月28日、日本の対台湾窓口機関である公益財団法人交流協会は、2017年1月1日より、名称を「公益財団法人日本台湾交流協会」に変更することを発表した。

 

交流協会は、1972年9月の日中国交正常化に伴い、日本が中華民国(台湾)と断交したことを契機として設立された日本の対台湾窓口機関で、日台間における実務関係の促進、また事実上の大使館として機能してきた。

 

1972年12月1日、経団連副会長であった堀越禎三ら発起人12名が財団法人交流協会発起人総会を開催し、同月5日には外務、通産両大臣に対して設立許可申請書を提出、その後、8日に財団法人交流協会が設立された。

1972年12月26日には台湾側のカウンターパートである亜東関係協会(1972年12月2日設立)との間で「在外事務所の相互設置に関する取決め」を調印し、これに基づき交流協会は台北及び高雄に在外事務所を設置した。

また2012年4月1日には総理大臣の認定を受け、公益財団法人に移行している。

 

今回の名称変更について、台湾の外交部は28日、プレスリリースを発表し、「この新しい名称は交流協会の台湾における業務の実質を明確に反映しており、台日双方の関係が良い方向に進んでいくことを裏付けたことについて、外交部は歓迎する」と肯定的な評価した。

また同プレスリリースでは、台湾にとって日本が第3の、日本にとって台湾が第4の貿易パートナー国であることや、双方の人的往来が盛んであることに言及した上で、「各領域における相互の互恵協力関係は引き続き深化するだろう」と期待を表明した。

 

一方、中国は名称変更に対し、外交部報道官の華春瑩が28日、記者の質問に「我々は『二つの中国』や『一中一台』を作り出す企てには徹底的に反対し、日本の台湾問題におけるネガティブな試みに対して強烈な不満を表明する」とした。また日中共同声明の原則を遵守し、「一つの中国」原則を堅持するよう求めた上で、「日中関係に新たな阻害をもたらしてはならない」と非難した。

 

以前から地域名である「日本」および「台湾」が欠如していたことで、「交流協会」の知名度不足の問題が指摘されていたが、今回の名称変更は問題解消に向けて前向きに作用するだろう。

一方で交流協会のカウンターパートである亜東関係協会の「駐日台北経済文化代表処」についても、「台北」ではなく「台湾」に名称変更すべきだとする主張が以前から存在する。

 

今回の日本側の対応が台湾側の名称変更を促すかは未知数であるが、同時に中国の反応についても引き続き注視する必要がある。

中国空母「遼寧」の宮古海峡通過、西太平洋進出

日中関係

12月25日午前10時頃、中国初の国産空母「遼寧」が宮古海峡を通過し、西太平洋に進出した。同日の統合幕僚監部報道発表資料「中国海軍艦艇等の動向について」によると、確認したのは中国海軍クズネツォフ級空母(遼寧)1隻、ルーヤンⅡ級ミサイル駆逐艦2隻、ルーヤンⅢ級ミサイル駆逐艦1隻、ジャンカイⅡ級フリゲート2隻の計6隻で、これらは宮古島の北東約110kmの海域を東シナ海から太平洋に向けて南東進した。

前日の12月24日午後4時頃にも海上自衛隊第12護衛隊所属「とね」(呉)が東シナ海中部の海域で動向を確認しており、それと同一のものと発表した。

また25日午後にはジャンカイⅡ級フリゲートから哨戒ヘリコプターZ-9が発艦し、宮古島領空の南東約10kmから30kmの空域を飛行したことを緊急発進した戦闘機等が確認したとしている。

なお、クズネツォフ級空母が太平洋に進出するのを確認したのは海上自衛隊としては初めてのことである。

 

一連の中国海軍の動向について、中国海軍報道官の梁陽は24日、「中国人民解放軍海軍『遼寧』等から編成されている艦隊の西太平洋海域における遠海訓練は年度訓練計画に基づいて実施している」と説明している。

 

また台湾の国防部は26日、「遼寧」が午前9時(台湾時間)、屏東県鵝鑾鼻の南方90海里(150km)の海域を南西方向に向かって通過したとするプレスリリースを発表した。プレスリリースによると、25日の20時(台湾時間)にも「遼寧」等計6隻の艦隊が台湾が設定する防空識別区から20海里の海域よりバシー海峡を通過したことを確認している。

 

今回の「遼寧」等艦隊の一連の行動の意義について、中国海軍軍事学術研究所研究員の張軍社は25日、「環球時報」の取材に対し、「いわゆる『第1列島線』を通過し西太平洋に進出したこと」と回答している。また一連の訓練から「遼寧および空母編成隊がすでに戦闘力を形成したことがわかる」と評価し、遼寧が2012年に就航してから4年というスピードで戦闘力を形成したことは「外部の予測を大いに通り越した」としている。

 

また26日、中国の「環球時報」は「遼寧編成隊は遠洋航行し、第2列島線に進出すべき」と題した社説を発表している。

同社説は、遼寧は現在「試験艦」という位置付けであるが、「世界に向けて中国の能力と決意を示す」ために今後、更に国産空母を建造する必要があると主張している。

そして「第1列島線の進出にとどまらず、第2列島線にも進出しなければならない」と強調している。

加えて中国が「アメリカの核心的利益地域に迫る能力を有すれば、現在の一方的にアメリカから中国に対して圧力がかけられている状況を変えることができる」として、その戦略的意義からも空母戦闘群の「遠洋化」が必要と強調している。

 

今回の「遼寧」等の動向ついて、中国が戦術的な意図(最近の「トランプ発言」や台湾への牽制など)をもって今回の行動を取ったのかどうかは今後の動向を引き続き注視する必要があるが、いわゆる「A2AD(接近阻止・領域拒否)」能力を誇示する戦略的な意味を有していたことは指摘できる。

「環球時報」の社説が主張する通り、第1列島線にとどまらず第2列島線に進出し、西太平洋における中国の影響力を確立するという戦略目標は今後も不変であると考えられ、政治的また戦略的効果を狙って中国は海空問わず引き続き軍事的行動を取るだろう。

中国軍機の宮古海峡上空通過

日中関係

12月10日、中国軍機6機が沖縄本島と宮古島の間の宮古海峡上空を西太平洋に向かって通過した。同日の統合幕僚監部の「中国機の東シナ海における飛行について」と題した報道発表資料によると、中国機の内訳はSU-30戦闘機が2機、H-6爆撃機が2機、TU-154情報収集機が1機、Y-8情報収集機が1機で、自衛隊は戦闘機等を緊急発進させ対応したとしている。

中国軍機のうちSU-30の2機は宮古海峡を通過後、反転して引き返し、残りの4機は台湾とフィリピンの間のバシー海峡に向かった。

 

これに対し中国国防部報道官の楊宇軍は10日、同日午前に中国空軍機が宮古海峡から西太平洋に向かって飛行したのは「定例の遠海訓練である」とし、「自衛隊のF-15戦闘機2機が中国軍機に対して近距離での妨害飛行を行ない、妨害弾も発射して、中国軍機及び人員の安全に危害を加えた」として抗議を表明した。

さらに楊は宮古海峡上空が「国際航路」であるという中国の解釈を示し、「いかなる特定の国家想定や目標はなく、国際法及び国際慣習に適合したものである」と中国軍機が同海峡上空を飛行することの正当性を強調した。また「自衛隊の行為は危険で未熟であり、国際法が認める航行及び飛行の自由を破壊」しており、「近年、日本の艦船及び航空機の度重なる妨害活動が誤解や誤った判断を導き、海空での摩擦や衝突を引き起こしている」と日本側に責任がある旨、言及した。

 

なお、11日の時事通信の報道によると、防衛省は「中国軍用機に対し近距離で妨害を行った事実はなく、妨害弾を発射し中国軍用機とその人員の安全を脅かした事実も一切ない」と否定するコメントを発表し、さらに「事実と明らかに異なることを中国国防省が一方的に発表したことは、日中関係の改善を損なうものであり、極めて遺憾だ」と非難したとしている。

 

宮古海峡では2016年9月25日、中国軍機8機が通過しており、同海峡で中国の戦闘機が通過したのはその時が初めてであった。同日の統合幕僚監部の報道発表資料によると、中国機の内訳はH-6爆撃機が4機、TU-154情報収集機が1機、Y-8情報収集機が1機、戦闘機(推定)が2機で、これらに対して自衛隊の戦闘機等が緊急発進し対応している。

 

この時も今回同様に中国国防部報道官の楊宇軍が9月29日の定例記者会見において、同海峡上空の通過は「定例訓練」であり、「いかなる特定の国家想定や目標はない」とし、「中国軍機は関連の空域の飛行の自由を享受しており、中国の行動は合法で成熟している」と中国軍機の行動を正当化している。加えて「中国軍は情勢や任務の必要に基づき、遠海訓練を継続する」と表明し、同海峡上空を中国軍機が再び通過することを示唆していた。

 

また2016年11月25日にも中国軍機が宮古海峡上空を通過し、自衛隊は緊急発進して対応している。11月25日の統合幕僚監部の報道発表資料によると、中国機の内訳はSU-30戦闘機が2機、H-6爆撃機が2機、TU-154情報収集機が1機、Y-8情報収集機が1機の計6機で、今回と同型同数であった。

 

11月30日、中国国防部報道官の楊宇軍は定例記者会見において、やはり同海峡の通過は「定例訓練」であることと同訓練を「継続する」ことを強調していた。

 

今回の中国軍機の飛行の意図については引き続き分析の必要はあるが、2016年9月25日に同海峡上空を初めて戦闘機が通過していることと無関係ではなく、「定例訓練」の一環で、「国際航路である宮古海峡上空の通過は国際法に適合している」という中国の主張は今後も繰り返されるだろう。加えて同海峡が九州、沖縄、台湾、フィリピンに連なるいわゆる「第1列島線」に該当し、中国にとって重要な戦略的意義を有していることを鑑みれば、今後も同種の軍事的行動を常態化させ、場合によっては行動のレベルを徐々に引き上げていくことを注視する必要があるだろう。

トランプ-蔡英文電話会談

米台関係

12月2日、米国次期大統領のドナルド・トランプは台湾の総統である蔡英文と電話会談を行なった。米国の次期大統領が台湾の総統と直接の電話会談を行なったのは、1979年に米国と中華民国(台湾)が断交して以来、初めてとされる。

 

電話会談が行なわれた翌日の3日、台湾の総統府は正式に電話会談に関する報道文を発表した。報道文によると、会談は2日、台湾時間の23時から行なわれ、台湾側は総統のほか、国家安全会議秘書長の吳釗燮、外交部部長(外務大臣に相当)の李大維、総統府代理秘書長の劉建忻、総統府報道官の黃重諺が同席した。

冒頭、蔡からトランプの大統領当選に対する祝意が伝えられ、トランプが就任した暁には「必ずや傑出した執政がなされる」と期待が述べられた。会談では国内経済の発展、国防強化、国民生活の向上及び安全保障に関する考えや理念のほか、両者のアジア地域情勢に対する見方についても意見交換がなされた。また米台関係について、蔡は「今後、更に緊密な協力関係が構築できる」とし、併せて台湾が国際的な課題に対して「より多く参画し貢献できる機会」があるよう支持を求めた。

 

台湾の新聞「蘋果日報」によると、会談は23時6分から23時18分までの約12分間、行なわれた。会談に同席した総統府報道官の黃重諺によると、両者の呼称は、蔡がトランプを「Mr.President-elect」、トランプが蔡を「Mrs.President」と呼び合ったという。

 

トランプも3日、自身のツイッター上で電話会談について投稿し、「The President of Taiwan CALLED ME today to wish me congratulations on winning the Presidency. Thank you!」と「CALLED ME」を大文字にすることで「台湾総統」のほうから電話があったことを強調している。また同日、「Interesting how the U.S. sells Taiwan billions of dollars of military equipment but I should not accept a congratulatory call.」とも投稿しており、電話会談の正当性を強調している。

 

この電話会談について中国政府も反応を示している。3日午前、中国外相の王毅は香港フェニックステレビ記者の質問に対し、「(この電話会談は)台湾方面が行なったつまらない策略に過ぎず、国際社会ですでに形成されている『一つの中国』原則を覆すことは不可能である」と回答している。また「私が思うに、米国政府も長年堅持してきた『一つの中国』原則を覆すことは不可能だろう。『一つの中国』原則は米中関係の健全な発展の基礎である」と米国に対する牽制もしている。

 

また外交部報道官の耿爽は3日の記者会見において「すでにこの件について米国に遺憾の意を伝えている」とした上で、「一つの中国」原則が米中関係の政治的基礎であることを強調した。台湾問題を所管している国務院台湾事務弁公室報道官の安峰山も3日、「台湾方面のつまらない策略によって台湾が中国の一部分であるという位置付け、また『一つの中国』原則を覆すことは不可能である」とし、加えて「台湾独立」についても改めて反対を表明した。

 

電話会談が行なわれた2日、北京の人民大会堂では習近平と米国元国務長官のキッシンジャーが握手を交わし、会談で習はトランプ新政権下の米中関係について「不衝突不対抗、相互尊重、ウィンウィンの原則を堅持し、引き続き米中『新型大国関係』の構築を推進する」と決意を語っていた。皮肉にも米中国交正常化の立役者でもあるキッシンジャーが訪中し、習近平と会談を行なったその日にこの電話会談が行なわれたことは中国にとって一つの「トランプショック」であっただろう。

トランプ大統領の誕生と中国

米中関係

アメリカとの「新型大国関係」の構築を唱え、対等な米中関係を模索している中国であるが、トランプ新大統領の誕生をどのように受け止めているのであろうか。

 

トランプの当選が決まった11月9日、中国国家主席の習近平はトランプ次期大統領に対し祝電を送った。そのなかで習は中国を「最大の発展途上国」、アメリカを「最大の先進国」と位置づけ、その「世界二大経済国」には世界の平和と繁栄に対する「特殊な重大責任」があると指摘し、米中の対等な関係を強調した。また米中関係について「不衝突不対抗、相互尊重、ウィンウィンの原則」を堅持し、更なる両国関係の発展に期待を示した。

 

また11月14日、習はトランプとの電話会談を行ない、直接、祝意を伝えている。電話会談で習は、米中国交正常化以来の37年間にわたり、米中が世界及び地域の平和と繁栄を促進したとし、「協力こそが米中両国の唯一の正しい選択肢」であると米中関係のあり方を提示した。トランプも習の祝意に感謝すると同時に習の米中関係に対する見方に賛同している。

 

この電話会談の翌日、共産党機関紙で人民日報系の「環球時報」は「習近平・トランプ電話会談 積極的シグナルを伝達」と題した社説を掲載している。社説は電話会談が「米中関係の重要な一歩を踏み出した」とし、肯定的な評価をしている。

またトランプが政治素人であり、かつてのワシントンのエリート政治とは一線を画していることに言及し、トランプが「実益」を求めるリーダーになる可能性を指摘している。すなわち新政権の最重要課題は経済及び社会建設であり、いわゆる「中国包囲網」には与せず、ウィンウィンの相互互恵関係を重視した政権になりうると期待を示している。

 

しかし、トランプ政権の陣営や方針が不明確な状況で、中国にはトランプに対する期待の反面、懸念も存在している。11月9日、「環球時報」は中国国内の専門家に対する取材を行なっており、複数の専門家の見方を掲載している。

例えば中国人民大学国際関係学院副院長の金燦栄は、トランプ新政権がヒラリークリントンのようにアジアリバランス政策を推進することはなく、中国に対する戦略的な圧力は軽減されるものの、トランプが「米国第一主義」や「孤立主義」に基づいて新しい条件や要求を提示し、米中経済貿易関係では一定の摩擦が生じる可能性があると懸念を示している。

また、清華大学公共管理学院教授の楚樹龍もトランプが「新型大国関係」を公式に反対することは不可能だろうとするが、経済貿易関係については選挙戦中の中国企業に対する厳しい発言や保護主義の姿勢から鑑みると消極的な影響があると分析している。

 

11月11日には新華社がトランプ大統領の誕生が米中関係にもたらす影響について中国共産党中央党校国際戦略研究所副所長の高祖貴にインタビューを行なっている。高は「外交方面についてトランプは多少の調整はするものの、根本的な転換はせず、対中政策についても大きな変化はない」と分析している。理由としては過去の米中関係が共和党及び民主党の両党のコンセンサスの結果であるためとしている。すなわちオバマ政権下においても対中政策は両党の合意があってはじめて執行可能であり、一方の政党が多数派として政権を担っていても根本的な政策転換は不可能であると主張する。

ただし対中政策に根本的変化が見られないとしても、経済貿易、金融、保護主義などの問題については一定の調整がなされ、加えてトランプの韓国及び日本に対する姿勢が米中関係の発展に影響を与えることも指摘している。

 

言うまでもなくTPP脱退を主張するトランプが次期大統領に選出されたことは、TPPを中国包囲網だと認識している中国にとっては良い知らせであっただろう。しかし、トランプ新政権の不確実性は未だ高く、期待の一方で懸念が存在していることは中国も例外ではない。特にトランプが国内政治を優先し、対外経済貿易でも内向きな姿勢を取ることは中国経済にも消極的影響を与えることは複数の専門家が指摘している通りである。高祖貴が指摘するようにトランプ新政権の対日、対韓姿勢も米中関係に影響を与える重要な要素である。当面はトランプ政権の外交・国防チームの陣営がどのようになるかが待たれる。

トランプ大統領の誕生と台湾

米台関係

共和党のドナルド・トランプが民主党のヒラリー・クリントンを破り、来年1月20日に第45代大統領に就任する。共和党としては8年ぶりの政権奪還であり、同時に行なわれた議会選挙においても上院(定数100)、下院(定数435)ともに共和党が多数派となったことで、議会のねじれが解消し、完全勝利となった。

 

しかし共和党内での候補者の選定過程で、いわゆる党内エスタブリッシュメントとの間に不協和音が生じており、外交・安全保障部門をはじめ、トランプ陣営の顔ぶれがはっきりしていないなかで、当面は国際社会におけるアメリカの不確実性は高まるであろう。

 

国際社会におけるアメリカの力は相対的には衰退しつつあるとはいえ、アジア太平洋地域の既存秩序を維持し、平和と繁栄に対してアメリカがこれからも一定の影響力を及ぼし続けることを期待している国は少なくない。

アメリカのアジア太平洋地域におけるプレゼンスに安全保障を依存している台湾にとっても、トランプ大統領の誕生は米台関係及び台湾の安全保障の重大な変数である。

 

アメリカと中華民国(台湾)は1979年1月1日の米中国交正常化により断交したが、同年4月10日、アメリカは国内法として「台湾関係法」を制定し、事実上の外交関係を維持してきた。同法に基づきアメリカは台湾に対して武器売却が可能で、事実上の大使館として米国在台湾協会(AIT)を窓口機関として設置し米台関係を深化させてきた。

 

アメリカの対台湾政策はこの台湾関係法のほか、米中共同で発表した3つのコミュニケ(上海コミュニケ、国交樹立に関するコミュニケ、817コミュニケ)に基づいている。それらの核心は「一つの中国」原則にあるが、加えて1982年のレーガン政権期には米国在台湾協会の台北事務所所長であったジェームス・リリーが口頭で蒋経国に対していわゆる「6項目の保証」を伝達した。これは(1)台湾への武器売却の期限を設けない(2)台湾への武器売却について中国と事前協議を行なわない(3)中台間の調停を行なわない(4)台湾関係法の改正に同意しない(5)台湾の主権に関する立場を変えない(6)北京当局と協議するよう台湾に圧力を加えない、という内容である。

 

2016年7月、共和党は党全国大会においてこの「6項目の保証」を政策綱領に初めて明記した。その経緯は同年4月から7月にかけて上下両院において、「台湾関係法」及び「6項目の保証」を再確認する決議案が可決されてきたことにある。

 

上記のようにアメリカが「台湾関係法」及び「6項目の保証」を堅持することが米台関係の基礎となっている。

 

したがってトランプ新政権が共和党の綱領に基づき「台湾関係法」及び「6項目の保証」を堅持さえすれば、米台関係の根本的な変化は避けられるだろう。

 

トランプの就任が確定した9日夜、蔡英文は高級幹部会議を開催し、行政院の3部長及び国家安全会議秘書長の報告を受けた。総統府報道官の黄重諺によると、同会議上、蔡英文は「台湾関係法」及び「6項目の保証」に関する決議案がアメリカ議会で可決されたことを改めて評価し、それがアメリカの党派を越えたコンセンサスであることから、トランプ政権下の米台関係にも自信を持っていると述べたという。

 

蔡英文は外交部を窓口としてトランプに対し祝電を送っている。祝電では「米台関係は自由、民主、人権などの普遍的価値および平和促進、安定と経済繁栄の共通利益に基づいている」とし、「域内あるいはグローバルな議題にかかわらず、台湾はアメリカを緊密かつ頼りにできるパートナーとし続け、米台共同の努力のもと、双方の友好と互恵関係を更に強化する自信がある」と述べた。

蔡英文の自信の裏には不安もあるはずである。選挙戦ではトランプは一度だけ台湾に言及し、台湾がアメリカ人労働者の雇用を奪っていることを非難した。また台湾が加盟を目指すTPPについてもトランプは選挙戦で反対の立場を明言した。

 

当面は不確実性が高まるが、スタッフの顔ぶれや外交方針なども就任日の1月20日に向けて徐々に明らかになっていくはずだ。台湾にとってはトランプが共和党の綱領にある通り「台湾関係法」及び「6項目の保証」を堅持するか、TPPの行方がどうなるかを注視していくことになるだろう。

「日台海洋協力対話」第一回会合

日台関係

10月31日、東京都内にて「日台海洋協力対話」の第一回会合が行なわれた。これは蔡英文政権発足直後に、日台の窓口機関である交流協会と亜東関係協会が「海洋協力に関する様々な事項に関する日台間の対話の枠組み」として合意し立ち上げられた。

6月21日には台北にて交流協会台北事務所代表の沼田幹夫と亜東関係協会会長の邱義仁も出席し、日台双方の窓口機関による予備協議が行なわれた。同予備協議では7月下旬に台北で第一回会合を行なうことで一致していたが、台湾側から「準備不足」との理由で延期の申し出があり、開催が見送られていた。

しかし10月6日に蔡英文は就任後初となる日本メディア(読売新聞)のインタビューに応じ、近く「日台海洋協力対話」の会議日程等が発表されると述べ、10月27日に正式に31日に東京で開催される旨、公表された。

 

第一回会合は午前9時から午後5時まで行なわれ、出席者は日本側は交流協会会長の大橋光夫をはじめ、交流協会、外務省、海上保安庁、農林水産省、文部科学省等の関係者で、台湾側は亜東関係協会会長の邱義仁が代表団団長を務め、農業委員会漁業署、海巡署、科学技術部、国家安全会議、外交部及び亜東関係協会の関係者であった。

台湾の新聞「聯合報」によれば、席順は日本側では海上保安庁、農林水産省が、台湾側では海巡署(海上保安庁に相当)、漁業署がそれぞれ最前列に着席しており、会合では漁業権に関する問題が焦点となったと考えられる。

 

会合後に、台湾は外交部が、日本は交流協会がそれぞれ会合の概要について発表している。

主な内容は(1)対話を原則一年に一度開催する(2)第一回会合では漁業協力、捜索救助協力、海洋の科学的調査等について率直な意見交換(3)来年は台湾にて第二回会合を開催する(4)漁業協力及び海洋の科学的調査についてワーキンググループを設置する、となっている。

 

しかし日台双方のプレスリリースにおいて、台湾側のみ言及していたのが沖ノ鳥「島」に関する問題である。台湾側の発表によると、会合において台湾側は漁業協力に関する議題の中で、台湾漁船の「沖之鳥」海域における権利を主張し、日本側に「東聖吉16号」を拿捕したことを抗議するとともに訴訟保証金の返還を求めた。これは馬英九前政権時の4月25日に横浜海上保安部が沖ノ鳥島の排他的経済水域で無許可操業をしていた台湾漁船「東聖吉16号」の船長を現行犯逮捕した事件を指している。

台湾側の主張に対して日本側は従来通り沖ノ鳥島が排他的経済水域を有するとの立場を繰り返している。

 

日台間の漁業協力、捜索救助協力、海洋の科学的調査など海洋に関する幅広い議題を扱い、更に定期的に会合を開催するプラットフォームが設立されたことは長期的な日台の海洋協力関係を構築する上で双方に利益をもたらし得る。今後はワーキンググループにおいてより具体的かつ詳細な議論が展開されていくであろう。そのなかで双方が相違を乗り越え、合理的な成果が導き出されることが期待される。台湾の外交部部長である李大維は次の漁期までに双方は「解決策を見つけられる」と前向きな発言もしている。

次の漁期は来年の4月から6月である。「日台海洋協力対話」の議論の推移に注目したい。