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灼熱東亜~在台日本人の観る日本・台湾・中国~

台湾に住む日本人大学院生が東アジア(日本・台湾・中国)情勢について書きます。

トランプ大統領の誕生と中国

アメリカとの「新型大国関係」の構築を唱え、対等な米中関係を模索している中国であるが、トランプ新大統領の誕生をどのように受け止めているのであろうか。

 

トランプの当選が決まった11月9日、中国国家主席の習近平はトランプ次期大統領に対し祝電を送った。そのなかで習は中国を「最大の発展途上国」、アメリカを「最大の先進国」と位置づけ、その「世界二大経済国」には世界の平和と繁栄に対する「特殊な重大責任」があると指摘し、米中の対等な関係を強調した。また米中関係について「不衝突不対抗、相互尊重、ウィンウィンの原則」を堅持し、更なる両国関係の発展に期待を示した。

 

また11月14日、習はトランプとの電話会談を行ない、直接、祝意を伝えている。電話会談で習は、米中国交正常化以来の37年間にわたり、米中が世界及び地域の平和と繁栄を促進したとし、「協力こそが米中両国の唯一の正しい選択肢」であると米中関係のあり方を提示した。トランプも習の祝意に感謝すると同時に習の米中関係に対する見方に賛同している。

 

この電話会談の翌日、共産党機関紙で人民日報系の「環球時報」は「習近平・トランプ電話会談 積極的シグナルを伝達」と題した社説を掲載している。社説は電話会談が「米中関係の重要な一歩を踏み出した」とし、肯定的な評価をしている。

またトランプが政治素人であり、かつてのワシントンのエリート政治とは一線を画していることに言及し、トランプが「実益」を求めるリーダーになる可能性を指摘している。すなわち新政権の最重要課題は経済及び社会建設であり、いわゆる「中国包囲網」には与せず、ウィンウィンの相互互恵関係を重視した政権になりうると期待を示している。

 

しかし、トランプ政権の陣営や方針が不明確な状況で、中国にはトランプに対する期待の反面、懸念も存在している。11月9日、「環球時報」は中国国内の専門家に対する取材を行なっており、複数の専門家の見方を掲載している。

例えば中国人民大学国際関係学院副院長の金燦栄は、トランプ新政権がヒラリークリントンのようにアジアリバランス政策を推進することはなく、中国に対する戦略的な圧力は軽減されるものの、トランプが「米国第一主義」や「孤立主義」に基づいて新しい条件や要求を提示し、米中経済貿易関係では一定の摩擦が生じる可能性があると懸念を示している。

また、清華大学公共管理学院教授の楚樹龍もトランプが「新型大国関係」を公式に反対することは不可能だろうとするが、経済貿易関係については選挙戦中の中国企業に対する厳しい発言や保護主義の姿勢から鑑みると消極的な影響があると分析している。

 

11月11日には新華社がトランプ大統領の誕生が米中関係にもたらす影響について中国共産党中央党校国際戦略研究所副所長の高祖貴にインタビューを行なっている。高は「外交方面についてトランプは多少の調整はするものの、根本的な転換はせず、対中政策についても大きな変化はない」と分析している。理由としては過去の米中関係が共和党及び民主党の両党のコンセンサスの結果であるためとしている。すなわちオバマ政権下においても対中政策は両党の合意があってはじめて執行可能であり、一方の政党が多数派として政権を担っていても根本的な政策転換は不可能であると主張する。

ただし対中政策に根本的変化が見られないとしても、経済貿易、金融、保護主義などの問題については一定の調整がなされ、加えてトランプの韓国及び日本に対する姿勢が米中関係の発展に影響を与えることも指摘している。

 

言うまでもなくTPP脱退を主張するトランプが次期大統領に選出されたことは、TPPを中国包囲網だと認識している中国にとっては良い知らせであっただろう。しかし、トランプ新政権の不確実性は未だ高く、期待の一方で懸念が存在していることは中国も例外ではない。特にトランプが国内政治を優先し、対外経済貿易でも内向きな姿勢を取ることは中国経済にも消極的影響を与えることは複数の専門家が指摘している通りである。高祖貴が指摘するようにトランプ新政権の対日、対韓姿勢も米中関係に影響を与える重要な要素である。当面はトランプ政権の外交・国防チームの陣営がどのようになるかが待たれる。